西洋医学と伝統医療

https://www.tsumura.co.jp/kampo/info/harmony/index.html

ツムラHPより画像を拝借

世界のどこに行っても、西洋医学とそれぞれの国の伝統に即した伝統医療が存在しています。これはとても不思議な感じがします。おそらく多くの方々は、西洋医学さえあれば、伝統医療など不要だろうと考えておられるのではないでしょうか。伝統医療は幅の広い領域で、その中には科学では説明できない領域もあります。例えば、加持祈祷などといった病気の人の治癒を祈ることも伝統医療の一つです。

アボリジニの社会やアメリカのような先進的な国にも、そして沖縄にもユタのようなシャーマンがいます。私もアメリカで毎週日曜日にキリスト教教会に行っていましたが、留学中に義理の母が亡くなり、教会の牧師がその件を取り上げてくれて、教会の信徒全員が祈ってくれました。この時、精神的にケア(Care)してもらえたと思います。

ケア(Care)とキュア(Cure)は医療の基本的概念で、キュア(Cure)は、おもに医師が、体の悪い部分に医学的な治療を施すもので、ケア(Care)は病いに悩む患者に対し,不安や社会的問題、家族間の問題など、全人的なアプローチをするもので,入院中の病棟内では、おもに看護師が担当すると捉えられることが多いです。

医師は医療界のトップに君臨する何でもできる職種で、医療に関するすべての行為が医師法によって認められ、免責されています。保健師・助産師・看護師法には、医師法には無い条文として、「傷病者若しくは褥婦(産後の女性)に対する療養上の世話」というものが含まれていて法律的にケア(Care)について書かれています。

医師は、生物医学的な病変を分析して、治療することが一番重要な仕事となります。「分析」の「分」の意味は、対象物を分けていくこと、そして「析」は、木材を小片に細かく分けることです。漢字の意味からも、体全体を見るというよりは、細胞レベル、染色体やDNAレベルまで、肉体を分けて科学的に病気の原因を探していくのです。

そのように、医師は体を対象物として細かく見ていくので、場合によっては近視眼的になり、患者の心や全人的な人間的な対応が不足することがあるのです。もちろん、精神的なフォローができる医師もいると思いますので、一般的にそのようなことがあるということです。

私の指導教授が、産婦人科医のセミナーに参加されたそうです。そのセミナーは、「Reproductive Health and Rights (SRHR)」(性と生殖に関する健康と権利)と訳される、すべての人の「性」と「生き方」に関わる重要なことをテーマとしていました。

そしてそれとともに、「Pleasure and Justice」(喜びと正義)というテーマもあって、女性が性的な行為に同意するかどうかだけでなく、女性が同意する状況が、喜びと正義の両方に資するかどうかが大切ということになります。

https://bostonreview.net/articles/pleasure-and-justice/

そのあたり、私にとっては苦手な議論で何とも言いにくいのですが、産婦人科医領域においても医学的に正しい判断がされているばかりではなくて、医療界の最上位に君臨する医師による西洋医学の横暴さを感じる事例が起きているということでした。

今回のセミナーは、望まぬ妊娠から壮絶な不妊治療によってやっと授かったような、様々な状況によって出産というイベントに遭遇する女性は、誰にも相談できないまま、医師の言われるままに出産することが普通となっていることに対する問題提起であったようです。

本当に毎月の検診が必要なのか、超音波診断が必要なのか、出産時は痛みを感じるべきなのか(アメリカや北欧などでは無痛分娩がほとんど)当たり前とされている医療行為が根拠ある医療行為になっているのかを今後問われていくことになるかもしれません。

先程、西洋医学の横暴さと書きましたが、医療行為は体を治すために体を傷つけることが前提となっている行為が多いように思います。もちろんそれは必要な行為なのですが、例えば、手術は当然、体を傷つけますし、薬やワクチンも副作用や副反応の可能性よりも、薬によって得られる効果が高いからそれらを飲んだり、注射したりします。しかし、これらの医療行為を受けることによって起こった体の不調はどのように解決すべきでしょうか。

伝統医療では、漢方薬など効果が非常にマイルドな薬を使用して、いわゆる対症療法という体が重いとか、疲れ目で目がかすむといった症状を緩和するために使います。これらの漢方薬に副作用が全く無いわけではないのですが、薬を中止すれば一般的には回復すると言われています。

寿晃整骨院でやっている施術も、腰痛や首の痛みなどの症状を緩和するために行います。もしそれらの痛みが、内臓由来の痛みや、椎間板ヘルニアなど腰や首で神経が強く圧迫されているときなどは、医師の元へ紹介します。

西洋医学は、健康のために非常に大切な技術です。しかし、その必要な治療の結果、体や心のどこかが傷つくことがあるかもしれません。また、体の側には症状に見合った生物医学的な組織の損傷や病変がない場合もあります。そのようなことが起こった時に、伝統医療の出番がやってきます。

鍼灸施術、マッサージなど伝統医療といわれる施術のほうが、体に直接物理的な影響を与えるので、筋膜による痛みなどに有効な場合もあります。長い時間をかけて症状を聞いてもらうだけで心が整理され、症状が消失してしまうこともあります。それが、先進国といえども伝統医療が、世界のどこにでも存在している大きな理由です。

最後に、指導教授には、「伝統医療側は、西洋医学の補完的機能の担い手としてもっと勉強しなさい」と指摘されました。

頑張ります。

寿晃整骨院 総院長 木下広志