私たちはこれからどうなっていくのかをまじめに考える 

「21世紀の人類のための21の思考:ユヴァル・ノア・ハラリ(歴史学者、哲学者)」

ロシア軍によるウクライナ侵攻が1か月を過ぎ、またコロナがどのようになっていくか、先の見えない世の中をどう過ごしていけばいいのか不安になる今日この頃です。

一般の庶民にとって、生活をしていけるかどうかはとても重要な問題で、寿晃整骨院でも20名を超えるスタッフの雇用を維持していくことは、私にとって最重要課題です。そのためには寿晃整骨院の価値を患者様に提供し続けることが大切でスタッフの育成、施術の技術や知識の向上を中心に進めています。他の整骨院の方も招いて4月から勉強会を始めることにしました。

それだけではなく、私自身は、大学院で柔道整復師の社会的価値を見いだす研究とともに、世界がどのように動いていくのか、日本はどうなのか情報のアンテナを常に張り巡らせています。

先日、岡山大学で同級生だった友人が、私のところを訪問してくれました。理由は、会社を立ち上げるのでアドバイスが欲しいとのことでした。彼はまだ、30代の若者ですが、20代から始めた資産運用でシンガポールとラスベガスに不動産を持つとても優れた友人です。株への投資も当然行っており、億を超える金融資産があると推察しています。

そんなすごい彼にアドバイスすることなど何もありませんが、そんな中で勉強方法について、Amazonの読み放題のサービスについて話題になりました。彼は、「Audible」という本の聞き放題サービスを利用しているそうです。

ちょうど読みたかった「21世紀の人類のための21の思考」という本を無料体験で聞いてみました。良いですね~ 最近始めた筋トレやランニングの間、またその運転・移動の間に、1.5倍速で3時間ほど聞くことができました。

著者のユヴァル・ノア・ハラリは、この中で「雇用」について書いておられます。今後AIによって仕事が無くなるかもしれないというのです。例えば、一部の医師の仕事は、価値が落ちてくるかもしれません。医師の病気の診断能力をAIが越えてしまうだろうといっています。確かに、AIでの膵臓がんの画像診断正解率は94%だとニュースで書かれています。

https://www.sankei.com/article/20210726-WUY5XRSR3BO2PLKRMIUWQEZYDM/

そしてビッグデータの解析によって、病気の予測が可能となるだろうというのです。例えば、アップルウォッチをつけていると、心拍数や心電図、血液中の酸素飽和度(SpO2)などが分かるようになってきました。このデータを蓄積することで狭心症や高血圧、心筋梗塞などの数値が集まり、危険なデータの予測ができるようになり、もしかしたらそのまま電話機能で自動的に救急車に電話してくれるかもしれません。

このデータの蓄積には、個人情報が多く含まれるのですが、おそらく生命保険や損害保険分野への進出が見込まれます。病歴や性格、嗜好がデータとなるので危険度の高い人の保険は加入が断られるか、保険料が上がるかもしれません。

そうなると気温や湿度、気圧の変化から今日の病気の危険性を予測できるかもしれませんし、食事の内容、感情の起伏、既往歴などからどんどん精度が高まり、IT企業にはデータが蓄積され医療の精度があがるのです。アメリカでは健康保険も民営化されているので、糖分やアルコールが過多の人は健康保険にも入れない事態となるかもしれません。この問題は逆選択という医療経済学では一般的な判断です。

同様に、自動運転が一般的になってくると、バスやトラック、タクシーの運転手は不要になり、農業もトラクターや田植え機は自動運転になっていくことでしょう。UberEATSも人が運ぶ必要は無くなるかもしれません。最近は、自動応答してくれるAIロボットも登場し、新しいコンピュータを買おうとするときや銀行(BOA)などのホームページでは、自動応答チャット機能が働いています。

このようにAIは、私たちの生活を大きく改善し、効率化してくれる可能性を持っていますが、必要のない人間を作る可能性がこの本には書かれていました。運転手や農家の仕事などが減ってしまい、搾取ではなく、無用者を作るのだと作者は言います。

日本の経済は、バブル崩壊後、まったく経済成長をしておらず、株価も低迷を続けたことから失われた30年といわれ、株価こそ上昇しましたが、労働者の賃金が目に見えて増えるようなことはありませんでした。

私には、日本は遅れているのではなく、世界に先駆けて変化が起こっているようにも見えます。今後、IT化による効率的な社会がやってきて、一部の役に立つ人間のみが重用され、それ以外の人間は、無用者として、もしくは低賃金労働者として生きていくしかなくなってしまい、それが世界で最初に起こっているのが、日本ではないかと思うのです。

今回、ロシアの戦争を見て、武力を使って国境を越えることは、越えられたウクライナに大きな被害を出していますが、経済力を持って国境を越えているグローバル企業の力も、越えられた国の経済をボロボロにしてしまっているのではないかと心配するのです。

合理的な企業、効率的な産業はとてもいいことですが、その裏側でそれについていけない人たちもいて、その人たちはどうすればいいのかを考えます。失業した人は別の仕事をすればいいと、合理的な人たちはいいますが、タクシーに乗っていた人が、IT産業に就職できることはないでしょうし、そもそも給料の良い仕事があれば最初からそちらを選択していたと考えます。

規制緩和によって、タクシーやバスの事業がやりやすくなり、結果として運転手の賃金が下がったそうです。規制緩和すればいいというものでもないようです。既得権益や岩盤規制がどうなれば、暮らしやすく、経済発展する国になれるのか。国際的な競争の激しい世の中だと実感します。

IT企業の強者、Amazonの「Audible」という本の聞き放題サービスを「便利だなー」と思いながら、頭では別のことを考えている自分が、矛盾の塊であることに苦笑しています。

寿晃整骨院 総院長 木下広志