シーナ・アイエンガー(コロンビア大学ビジネススクール教授)の本 「THINK BIGGER(もっと大きく考えよう)」

シーナ・アイエンガーの「選択の科学」という本があります。ハーバード大学で一番人気の講義を持っていたマイケル・サンデル教授で有名なNHKの白熱教室でも取り上げられ、私はこの番組を見てシーナ・アイエンガー教授の大ファンになりました。彼女は敬虔なヒンドゥー教徒の家庭に生まれますが、子供の頃に目が見えなくなる病気になり、またお父さんも13歳の時に亡くなってしまいます。彼女の人生のとらえ方は、次の数式であらわせるそうです。

人生=選択×偶然×運命

人間には生まれ持った役割があり、それが「運命」です。そして目が見えなくなる、父の死などは「偶然」の出来事で、それらの背景に沿った自分の「選択」によって人生が紡がれていくと考えているそうです。これらが掛け算でくくられているのがミソですね。1つの数値がマイナスであれば、この人生の数式はマイナスの回答になってしまいます。そして0の数値が入るとその他の項目の結果に関わらず答えは0になります。そして、人生の数値の中で、自分でコントロールできるのは「選択」だけだと彼女は言います。この選択することの大切さが本には書かれています。

彼女が大学生の時に行った高級スーパーマーケットで売られているジャムの選択実験があります。そのスーパーマーケットの担当者は消費者の選択肢が多いほど売り上げが伸びると考えています。ある時、売り場には24種類のジャムが並んでいます。別の時には6種類しかありません。どちらの売り場の売り上げが多かったのかという実験です。6種類の売り場のほうが10倍の売上だったそうです。その後の研究で人間は選択肢が7つを超えると情報処理能力が落ちることが分かったそうです。

人間は必ず誤った選択をします。なぜ、誤った選択をするのでしょうか。選択には外部要因の「誘惑」と、内部要因の「経験則」が影響するそうです。最近のSNSを見ていると自分の意見を人に見てもらいたいという「誘惑」と、今までに得た薄い情報の真偽を確かめもせず、自分の持つ記憶と情報のみの「経験則」で判断された偏った意見を投稿しているように見えることがあります。

「人の為になるから正しい」という判断も、自分の偏った経験則やこうあるべきという思い込みから間違っているかもしれません。この思い込みを「バイアス」というそうです。私も気を付けなければならないと思います。この本にはその間違った選択をしない方法も書かれていますので、詳しくは本を読んでいただきたいと思います。そんなちょっと難しいが、考えさせられる「選択の科学」の著者、シーナ・アイエンガー教授の新しい本「THINK BIGGER」を読んでみました。この新しい本では、様々な選択をする以前に、どんな課題があるかを深く考えるべきだと言います。

例えば、家族の車を選ぶときに、家族の人数、誰が使うのか、何を乗せる可能性があるか、大きいほうがいいのか、狭い道を走るのか、運転技術はどうか、その車を買うためのコストはいくら払えるのかといった課題です。お父さんが20キロ離れた工場に働きに行くための車と、お母さんが2キロ離れた保育園に子供を送迎したり、近所のスーパーに買い物に行くための車は違う課題を解決する必要があり、選択は違ってきます。その課題を踏まえないでCMのイメージや人気によって判断すると燃費が悪くお金がかかったり、道幅に困ったりするかもしれません。

寿晃整骨院では、患者様の身体に潜んでいる課題を見つけるために、訴えが変わるごとに問診と理学検査を重点的に行っています。課題が寿晃整骨院の施術によって解決または改善できるようであれば、現在の身体の状態を詳しく説明し、同時に施術内容とその施術によって起こる効果も説明した後、施術を開始します。もし、その課題が医療機関による治療が勧められるようであれば、お身体の状態に専門性を持って対応してくれる医療機関を紹介させていただきます。

毎月、寿晃整骨院の各院院長が集合し、患者様へのサービスの状況やスタッフの動向についてミーティングを開いています。そこでは他の医療機関に紹介させていただいた患者様の身体の状態、検査内容、紹介させていただいた医療機関からの返信に対する情報を共有し、各院院長のレベルアップを図っています。

寿晃整骨院から派生した「鍼灸と整体じゅこうさん」では、総院長の木下が施術しておりますが、この12月に来院した患者様では、手に力が入らないという訴えからその筋力低下が下半身を含む右半身に及んでいることを検査で発見し、中枢神経の障害を疑い神経内科へ紹介した症例があります。また、腰痛で来院された50代の女性では鍼灸施術によって腰の症状は緩和しました。しかし、胃の調子が悪いという訴えから、この年代以上ではピロリ菌の検査が必須であることからかかりつけ医で診察を受けることを勧め、内視鏡による検査によって胃の摘出が必要なガンが見つかりました。その時には私にできる最善の課題発見と選択ができたと考えています。そして、患者様の今後の治癒を祈るばかりです。

寿晃整骨院 総院長 木下広志